オートペディーシューマイスターとは

化粧品を使っていて、顔に傷ができることはまずありえませんね。

 

手袋をしていて、指が曲がったという話も聞いたことがないはずです。もしもそんなことがあったら、大問題になってしまいます。

 

なのにどうして、靴をはいて足がゆがんでしまっても多くの人は誰も怒らないのでしょうか。私には不思議でなりません。足は見えない部分だから、どうでもいのでしょうか。

 

決してそうではないはずです。なかには、「靴は、はきならすまでに時間がかるから、最初は痛いのが当然」という方もいます。しかし、これもずいぶんと足を無視した考え方です。足に無理のある靴をはいていたら、その間に足は変形してしまうのです。ある意味で日本では、少し大げさにいうと靴が凶器として野放しにされているといってもいいのかもしれません。

 

靴の先進国ドイツでは、そんなことは決して考えられないことです。第一、ドイツの靴店と日本ふんいきの靴店とでは、雰囲気が大きく異なっています。単に靴の種類が豊富というだけではなく、そこは自分の足に合う靴を探す重要な場所でもあるからです。

 

なかでも、靴のお医者さん“ともいうべきオートペディーシューマイスターがいる店では、医師の指示にしたがってお客様の靴を調整しています。

 

オートペディーシューマイスターとは、整形外科の知識を持った靴職人なのです。ドイツでは、第一次世界大戦で多くの兵士が足に障害を負っために、靴メーカーと整形外科医が連携して彼らのために靴を作るようになりました。やがて彼らの特殊な靴作りの技術が確立し、1937
年にマイスターというドイツ独自の国家資格として正式に認められました。これがオート手作りを尊ぶドイツでは、あらゆる分野でマイスター制度が確立しています。

 

オートペディーシューマイスターになるには、見習いを含めて全部で7年ほどの期間がかかります。

 

まず、見習いと専門学校に通うのが3年半、そして試験に合格するとさらに3年間職人として働きながら専門学校で勉強します。そのあと9カ月間、全日制の学校で生理学や解剖学などの足についての知識を学んで卒業したあと、やっと国家試験を受けて、それをパスした人だけにオートペディーシューマイスターの資格が与えられるのです。

 

何事も徹底したものを作るドイツ人ならではの制度といえます。ドイツ以外のヨーロッパの国々も、靴については深い関心を持っています。オーストリア、オランダ、スイスなどでは、ドイツの靴の学校に留学して、その技術や知識を自分たちの靴作りに生かしている靴職人がたくさんいます。もちろん、ドイツ以外にも靴や足の専門家がいます。

 

カナダにはオートペディーシューマイスターに似たような資格としてペドーシックがあります。カナダでは、ドイツ人の靴作りの文化が高く評価されているのです。フランスにはポローゲンと呼ばれる靴と足の専門家がいます。また最近では、ドイツのオートペディーシューマイスターがフランスでも活躍しているといます。

 

今、欧米でドイツのオートペディーシューマイスターの指導によって、深い靴作りの文化が花開ところで、日本では、シューフィッター制度があります。シューフィッターとは、足に靴を正しているといっていいでしょう。正しく合わせる技術者のことです。

 

日本靴総合研究所(現在、足と靴と健康協議会)および日本靴小売商連盟が養成、認定している者で、昭和60年の4月にシューフィッターが初めて誕生しました。

 

足は一人一人によって異なります。足と靴について熟知した技術を持ったシューフィッターが、顧客の求めに応じて、靴選びのよきアドバイザーとしての役割をもつのです。

 

その後、シューフィッターの質の向上をめざし、さらに上級者としての資格であるバチェラーオブシューフィッター、さらにその上の資格であるマスターオブシューフィッターという3段階の資格ができました。